ED(勃起不全)とは

勃起障害(Erectile Dysfunction : ED)とは、十分な勃起が得られない、または維持できないために満足な性行為を行えない状態のことです。
大きくは、
◉精神的なストレスが原因となる心因性ED
◉病気や外傷が原因となる器質性ED
◉心因性と器質性2つの要素が合わさった混合性ED
◉特定の薬剤服用が原因で起こる薬剤性ED
の4つのタイプに分けられますが、多くのEDは混合性EDと考えられています。

勃起が起こるためには、神経や血管が正常に働かなければなりません。
正常な状態では、性的刺激が脳の中枢神経から骨盤神経を経由して、陰茎海綿体神経に伝わり、そして陰茎海綿体神経および陰茎海綿体の血管内皮細胞から一酸化窒素(NO)が放出され、陰茎海綿体にしみわたっていきます。
すると、サイクリックGMPという物質が陰茎海綿体の中で増えていき、陰茎の動脈弛緩、海綿体平滑筋弛緩が起こり、陰茎海綿体の中に大量の動脈血が送り込まれて充満します。これが勃起のメカニズムです。

ここで重要なのがNOです。NOは血管を拡張して、血流をよくする働きがあります。この血管拡張作用が、正常な勃起のためには極めて重要です。
しかし、NOは主に血管内皮細胞でつくられており、その血管内皮細胞が傷むと、十分にNOを放出することができなくなってしまいます。こうしてEDが起こります。

当クリニックでは、EDの予防・改善にSGFを用いた治療を行なっています。SGFが傷んだ血管内皮細胞を修復することによって血管の機能回復が望めます。
EDのスクリーニングやED治療の効果判定に使われているものにIIEF-5(International Index ofErectile Function : 国際勃起機能スコア)というものがありますが、当クリニックのED患者様の症例(38症例)では、合計3回のSGF投与により、IIEF-5は有意に改善し、18症例においては「EDなし」の治療効果を得ています。
また、IIEF-5の改善は年齢層によらず認められましたが、70歳以上の軽症〜中等症の患者様では効果が得にくく、70歳未満の重症の患者様ではほぼ100%の効果が得られました。一方、年齢で層別化すると、30歳代、40歳代が著しく改善するのに対して、50歳代、60歳代、70歳代では、スコアはあまり伸びません (SGF投与3回で初めの12点が16〜17点になる程度です)。しかし、SGF投与の回数を増やすことによって、十分効果を得られることがわかりました。

世界で注目されているED治療

幹細胞とは、人体の骨や血液、筋肉などのあらゆる組織や臓器の元となっている細胞であり、すべての種類の細胞に分化する能力を持っています。

この細胞の働きを用いて、けがや損傷した部位を再生させる「再生医療」が近年注目されています。従来の病気の治療に利用するだけでなく、ED治療にも応用できることが期待されています。

幹細胞治療は京都大学の山中伸弥教授のノーベル賞受賞によってさらに世界中で注目されている治療となっており、ED治療に応用した研究が米国をはじめとした各国で進められています。

SGFによるED治療

アールイークリニックでは、SGF(乳歯歯髄肝細胞培養上清液)を用いてED治療を行います。

週1回の注射を4週にわたって行い、内皮細胞の機能が修復させ、血管の拡張が進め勃起力を回復させます。

効果の持続性も従来のバイアグラと一線を画し、一時的なものではなく内皮細胞から改善させるため、ワンクール(4回の注射)を終えると一年以上の効果が持続されます。

また、従来の治療薬は心臓への負担や頭痛やめまいなどが懸念されますが、幹細胞治療は副作用のリスクが低く安心して治療を受けることができます。

将来的には保険適用も期待されており、SGFによる幹細胞治療は今後ますます注目を浴びるだろうといえます。

施術の流れ

SGF治療: 週1回 × 4週間 4回治療 (1クール)

EDの治療では、ペニスの根元に小さなヘアバンドをはめて、陰茎海綿体の左右に1回ずつ、計2ccの上清液を注射します。
超微細の針で打つので、通常の注射のような痛みはほとんどありません。

第20回日本再生医療学会総会 乳歯歯髄幹細胞培養上清液による勃起不全治療の発表内容

銀座ソラリアクリニック 古賀祥嗣

江戸川病院 泌尿器科 堀口 裕

 

演題名:乳歯歯髄幹細胞培養上清液による勃起不全治療

施設名:銀座ソラリアクリニック、江戸川病院 泌尿器科

氏名:古賀祥嗣

筆頭演者は、過去1年間(1月~12月)において、

本演題の発表に関して開示すべきCOIはありません。

背景

・本邦では、40歳以上の男性の3人に1人が勃起不全Erectile Dysfunction(ED)患者と推定されているが、その治療法は対症療法のみで、根本的な治療法は確立されていない。(Urology 2003;61:201-206 )

・2型糖尿病を有するED患者7例において、臍帯血幹細胞の陰茎海綿体移植にて勃起機能の改善を得た、との中間結果が報告されている。

(Exp Clin Transplant 2010;8:150-160 )

目的

乳歯歯髄幹細胞を培養した際に生成される上清液 conditioned media of human exfoliated deciduous dental pulp stem cells (SHED-CM)によるED治療の可能性を検討した。

方法

  • 2016年4月から2020年10月までの4年6ヶ月間に、当クリニックを受診したED患者38症例に対して、陰茎海綿体に直接、SHED-CMを注射投与した。
  • 本治療施行中に、EDに対するphosphodiesterase type 5 inhibitorや、late onset hypogonadism(加齢性腺機能低下症)に対するテストステロン補充療法は併用しなかった。

SHED-CMの調整

1.脱落乳歯より歯髄由来細胞を1 x 107培養。

2.血清含有培養液を除去し、無血清培養液に置換。

3.48時間後、培養上清を回収し、細胞成分をフィルター除去し、顕微鏡下に細胞除去を確認。

4.エンドトキシン試験および培養検査を施行。

方法

  • 効果判定には、EDのスクリーニングや治療の効果判定に使われる国際勃起機能スコアInternational Index of Erectile Function(IIEF5)問診票を使用した。

症例(年齢)

 

症例(治療前 IIEF5

症例(既往・併存症)

2型糖尿病:7例

高血圧:7例

持続勃起症に対してシャント術(6ヶ月前):1例

結果

3回投与後までに、平均6.2 (2-13) ポイントのIIEF5スコアの改善

IIEF5の有意な改善

年齢群別のIIEF5

Age < 60

Age ≥ 60

EDなし」治療効果の治療前予測因子

まとめ

・38症例のED患者に対して、SHED-CMの陰茎海綿体注射投与による治療効果を検討した。

・合計3回のSHED-CM投与により、IIEF5は有意に改善し、18症例(47.4%)において、 「EDなし」の治療効果を得た。

・IIEF5の改善は年齢層によらず認められた。

・「EDなし」の治療効果が得られる治療前予測因子としては、年齢、IIEF5スコアおよび有既往歴が有意な因子であった。

 

結語

本研究成果から、 SHED-CM治療により、EDの70%の成因である血管障害を改善することによるEDの根本的な治療法の可能性が示唆される。