線維芽細胞治療法とは

コラーゲンやヒアルロン酸をつくり出す力が増強します。
線維芽細胞は、肌の若々しさを保つためになくてはならない細胞です。
私たちの皮膚は、「表皮」「真皮」「皮下組織」の3つの層に分かれていますが、線維芽細胞が存在するのは真皮の層です。
そして、その真皮の大部分は、線維芽細胞がつくり出している成分─肌を構成する3大要素であるコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸で占められています。
コラーゲンは、網目状に張り巡らされ皮膚を支えているタンパク質の繊維で、肌のはりに密接な成分。エラスチンは、コラーゲンを束ね弾力のある肌をつくる成分。ヒアルロン酸は、真皮の隙間を埋めるゼリー状の物質で、真皮の構造を安定させる役割があり、肌の潤いに影響している成分です。
また、線維芽細胞は、血管の健康状態を保つ役割、美肌に関係する女性ホルモン(エストロゲン)をつくり出す役割、皮膚が損傷した際には、傷ついた組織に移動してコラーゲンの生成量を増やし、傷の修復を助ける役割なども担っています。
線維芽細胞の働きが活発であれば、健康的な肌を保つことができます。しかし、線維芽細胞は様々な原因によって衰え、減少していきます。加齢はその最たるものですが、他にも紫外線、乾燥、ストレスなどがあげられます。
その結果、美容成分の生成が減少し、しわ・たるみなど肌老化が進んでしまうことになるのです。
こうした肌老化を改善するために、当クリニックでは自己線維芽細胞を用いた治療を行っています。
この治療は、患者様ご自身の肌細胞(線維芽細胞)を採取して、それを当クリニック提携のCPC(細胞加工施設)で培養・増殖し、気になる部位へ移植するもので、老化や紫外線などでのダメージにより、老化・減少してしまった線維芽細胞を増強し、その働きを活性化することで肌の再生を図ります。
肌細胞は耳の裏から採取するため、施術後の跡が目立つということはありません。
また、現在、しわや肌老化の治療においては、コラーゲンやヒアルロン酸の注入が盛んに行われていますが、未知の感染症の可能性やアレルギーの報告等も認められています。
その点、線維芽細胞治療は、患者様ご自身の肌細胞を利用するものですので、副作用などの心配はほぼありません。
その上、効果の持続が長いという特長があります。

このような方へ

・肌質を根本から改善したい
・しわ・たるみ・目の下のくまが気になる
・肌の老化を遅らせたい
・従来の治療法では満足いかなかった
・メスを使う・異物を入れる治療に抵抗がある

治療を受けることができる方

・動脈硬化性病変を有すると判断された方
・頸動脈エコー検査で頸動脈(総頚動脈、内頚動脈)にプラーク(IMT1.1以上)を有する
・心筋梗塞、狭心症の既往がある。
・冠動脈 CT 検査で冠動脈壁不整、石灰化、狭窄、閉塞所見を有す。
・脳梗塞の既往がある。
・頭部 MRI、MRA 検査で脳梗塞巣が指摘される。
・二親等内の血縁者に動脈硬化性疾患を有する者が 2 名以上いる。
・遺伝子検査で動脈硬化の素因が高いと判断された。

治療を受けることができない方

1)治療申し込み時点で 18 歳未満
2)脂肪採取に十分耐えられる健康状態はない。
3)正常な同意能力を有さない、または代諾者から同意が得られない。
4)本治療に関する同意説明文書を受理し十分な説明を受け、自由意思による同意を文書で示していない(代諾者が文書にて同意していない)
5)問診、検査等などから担当医師により治療適応が無いと判断された方。
6)妊娠中の方。
7)婦人科系の疾患を治療中の方。
8)増殖性糖尿病性網膜症や加齢黄斑変性症の診断を受けた。
9)コントロールが不良な高血圧もしくは不整脈を認める方。
10)譫妄(せんもう)の臨床症状を示す。
11)ペニシリンの過剰反応がある。
12)脳梗塞や脳内出血、くも膜下出血などの脳血管障害にて現在加療中、または過去 3 か月以内に入院加療を受けた。
13)脳腫瘍にて現在加療中、又は未治療のうつ病、又は治療によっても改善していないうつ病に罹患している。
14)12 週間以内において、B 型肝炎、C 型肝炎、HIV、梅毒などの感染症検査の結果が陽性の方。

除外基準として、未成年等自己決定のできないもの、通院不可のもの、治療恐怖症、心肺機能の低下しているもの、免疫機能の低下しているもの、アレルギーのある者等を定めております。

治療の流れ

STEP1

カウンセリング
十分な説明を受けた後、提供計画に基づき同意書面をご提出頂きます。

STEP2

血液検査及び採血

自己細胞の採取のため、局所麻酔下で直径3.5㎜程度の口腔粘膜齦頬(ぎんきょう)移行部(歯ぐきと頬の境目の粘膜)を採取します。採取後は吸収性の糸によって1針縫合します。細胞採取日に培養液を作製するための血液50mlを採取します。また、培養液に用いる血液は1回目の注入診療時以降の来院時に必要に応じて採取を行います。1回目の採血以降は必要に応じてさらに2回~4回程度50mlの採血を行います。細胞増殖が悪い場合、組織の採取を再びお願いする可能性がございます。(関連機関を含め初診時98例中5例で再採取を行い、そのうちの1例で2回目の再採取を行いました。)


STEP

培養

採取により得られた粘膜中の線維芽細胞を自己血液成分入りの培養液で約2ヶ月培養します。

STEP4

投与

培養により調製された高濃度の細胞懸濁液を調製し、粘膜採取約2ヶ月後より2~3回、皺部皮内に培養した自己線維芽細胞を1回あたり1~4ml注入します。異常所見があればすぐに中止します。

STEP5
フォローアップ(経過観察)

注入後、3・6・9・12ヶ月後に治療の評価を行います。評価は術前術後の写真撮影等による診断を行い、受療者様御自身の満足度および医師による判定を行います。注入後経過観察期間内または1年経過後に問題が生じた場合には電話による相談またはご来院をお願いしています。

予想される効果と起こる可能性のある副作用

予想される効果

注入された自己培養線維芽細胞がコラーゲンなどの細胞外基質を産生し、皮下組織の再構築により肌の改善が期待できます。今までの研究によって、治療1年後の定量的な解析において、肌の水分、明るさ、きめの細かさに関して本来年齢とともに低下する値が有意差をもって上昇しているデータがあります。

起こる可能性のある副作用

治療効果は個人差があり、期待した効果が自覚できない場合があります。

(いままで統計をとれた45例中、1年後の主観的な5段階評価(非常に満足、満足、普通、不満、非常に不満)で3名の方が非常に不満、4名の方が不満と回答しています)

【軽微なもの】
粘膜採取時の局所麻酔注入による痛み、採取後の採取部位違和感(傷によるものや縫合によるもの、1週間程度)、線維芽細胞注入時の痛み、注入後一過性の発赤など、細胞が十分に増えない場合の組織の再採取

【重篤なもの】
注入後長期にわたる発赤や腫れ、感染、アレルギー、腫瘤形成※、色素沈着などの可能性(当院と関連のあった名古屋大学の関連医療機関における治療例で評価を行った150回の注入のうち注入後1回のみに長引く発赤が認められましたが2週間ほどで消失しました(注入当日から翌日は一過性の発赤が認められます)。その他の問題は報告されていません。また、名古屋大学で行われたこの治療と同様の臨床研究では注入直後の発赤は認められましたが、有害事象等認められていません。)

※腫瘤形成…いままで関連施設を含め本治療においてみられておりませんが、類似の治療方法で血液を遠心分離し皮下へ注入する方法のうち、成長因子を加えた方法において腫瘤形成をみとめた報告があります。

本治療における注意点

投与当日は、激しい運動、徹夜、過度の飲酒などは控えてください。

治療費用

本治療は、すべて自費診療であり、健康保険を使用することはできません。

試料などの保存及び破棄の方法

採取し培養した細胞加工物の一部は施術直前毎に-80度において最低10年間保存いたします。この治療にて採取した血液は、患者様ご自身の治療のみに使用します。治療結果を研究のデータとして用いる場合、ご本人様または代諾者様へ利用の可否の確認を別途いたします。また、治療結果の発表を含めあなたの名前や個人を識別できる情報は一切公表されることはありません。

健康、遺伝的特徴等に関する重要な知見が得られた場合の対応

この治療は研究として行われるものではないため、健康被害に対する補償は義務付けられていませんが、この治療が原因である健康被害が発生した場合は、必要な処置を行います。

本治療の審査、届け出

各種申請書作成支援サイト  https://saiseiiryo.mhlw.go.jp

線維芽細胞を用いた治療を当院で行うにあたり、再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づき、以下の再生医療等委員会の意見を聴いた上、再生医療等提供計画を厚生労働大臣に提出しています。なお、当院が再生医療等提供計画の提出を済ませた医療機関であることは、厚生労働省の「各種申請書作成支援サイト」というウェブサイトにも公表されています。

審査を行なった委員会:東京江戸川特定認定再生医療等委員会